開発部門紹介

「修理」から大きく進化した「レトロフィット」の技術

プレス装置は30年40年と継続的に使われる、産業機械としてはもっとも寿命の長いものです。それだけに導入当時は新しい技術だったものが、しだいに陳腐化していきます。それを再生するのが、エキスパートである私たちの使命です。当社が提唱しているのが、プレス設備の「修理」から一歩も二歩も進んだ「レトロフィット」です。たんに壊れた部分を直す、劣化した部分を交換するのではなく、旧型式の装置に新しい技術を組みこむことで、新型式の装置にも引けを取らない機能や生産性を実現していく。それが「レトロフィット」の真髄。コスト面でメリットがあるのはもちろん、地球環境の保全の見地からも理に適ったものです。

ビフォー/アフター、匠の心意気をもって

「レトロフィット」はちょうど建物の改装をイメージしていただけると良いでしょう。いままで暮らしていた愛着のある家を、より機能的で生活しやすいものへと作り替える。ここで重要なのは、その家は住みつづけられるものでなければならない。失敗は許されないということです。しのはらの「レトロフィット」も同じ責任感が求められます。いわば試作のない開発ですから、あらかじめ周到な計画を立て段取りをしていかなければなりません。

また、高いレベルで「レトロフィット」をおこなうためには、旧型機について熟知している一方で、最新技術が駆使できることが必要です。そのため当社では、機械技術、システム技術、制御技術、加工技術の各方面に目を配って、技術トレンドをキャッチアップ。たゆまなき研鑽をつづけています。それにともない、従来のメンテナンス機能に加えて、メーカー機能も拡充しつつあります。

数多くの実績に裏打ちされた、装置と使用法についての豊富なデータベース

プレス工程は多種多様な装置によって構成されています。違うメーカーの装置が混在していることも珍しくなく、またそれぞれの装置の導入時期によって使用年数・劣化状況もまちまちです。それらをトータルで把握して、最適な加工設備を実現さしあげるのが、しのはらの使命です。

それをおこなうためには、各装置についての知識も必要ですし、使用法についての知識も必要です。もちろん、お客さまごとに加工対象も千差万別なので、業務内容に対する深い理解も不可欠になります。私たちは「情報の発信源はつねにお客さまの現場にある」との考えのもと、ひとつひとつの案件ごとにデータを収拾し蓄積しつづけてきました。そうして築きあげた豊富なデータベースとその活用は、他の追随を許さないものと自負しています。

メンテナンスで「特許」

従来、しのはらが手がけるメンテナンスは過去の技術の集積であり、特許とは無縁と考えられていました。しかし1997年に特許庁が「特許流通促進事業」を開始したことが発端となって、社内でこのビジネスのなかにある「知的財産」の価値を見直す動きが活発化。プレス装置のより良い使用、メンテナンス、レトロフィットのための技術、コストダウンや短納期を実現する手法は、それ自体として充分に特許に値するという認識が浸透していきました。それが功を奏して、2002年には工業所有権制度活用優良企業表彰で特許庁長官賞を受賞しました。現時点では、特許取得済みが7件、申請中が5件、商標登録が11件となっています。


短納期・低コスト・最新技術を実現するために

「レトロフィット」の考え方をお客さまに良く知っていただき、当社のサービスをいっそう有効にご利用いただくためには、まだまだ努力が必要と考えています。大きなテーマは、短納期化・低コスト化の推進。ご存知のとおりプレス装置はメーカーが多岐にわたり、お客さまごとの使用法や使用環境も異なります。当社のサービスエンジニアが現場でデータを取り、図面を起こす作業がともないますので、ある程度の時間がかかってしまう。

このタイムラグを短縮するために、当社では装置についての情報のデータベース化を推進しています。お客さまの現場で修理をおこなう箇所だけではなく、その周辺のデータも収拾するとともに、装置の取扱説明書からも有効な情報を抽出。また、「レトロフィット」一連の段取りを標準化したパッケージモデル「プレスメンテパック」を開発し、それをお客さまごとにアレンジして提供することもしています。

その一方で、各メーカーがリリースする新型式プレス装置についても情報収集に努め、そこで用いられている技術をキャッチアップ。それら新しい技術を旧型式装置に組み入れる「リビルド」へと展開しています。この「リビルド」も、「レトロフィット」の重要要素なのです。

膨大な台数の案件にも滞りなく対応

大掛かりな案件に対する対応力も当社ならではと自負しています。私自身がこれまでに関わったなかでは、7000台にもおよぶエアクラッチの改良プロジェクトが最大のものですね。最近の事例では、100台以上のプレス機に安全対策・生産性向上に資するスライドロックを取りつけるプロジェクトがありました。

1台ごとに、スケッチ→図面作成→お客さまの承認→取りつけ作業という繰り返し。滞りなくやり遂げられたのは、私たち設計課だけではなく関連部署とのチームプレイがあればこそです。とくにスケッチは、サービスエンジニアの活躍によるところが大きい。ふだんから周到な研修を実施することで、誰もが的確なスケッチができるように備えているので、大規模な案件でもあわてずにすむのです。

「安全性」と「生産性」を両立したシステム技術

「プレス加工をおこなう」ことにのみ注目すればプレス装置はいわば成熟したテクノロジーです。しかし、安全性や効率化の追求を視野に入れれば、まだまだ追求の余地がある。私たちはその発想に基づいてシステム装置の開発をおこなってきました。当社のヒット商品「自動起動式シャッターガード」もそうやって生まれたものです。

従来の光線式安全装置は物理的に遮断されていないため、金型や材料の破損によって欠片が飛散したときにそれを防げませんでした。しかし、「シャッターガード」はオペレータの前面を強固なポリカーボネート製のカード板で遮断しますから、きわめて安全性が高い。また機構上、より金型に近い位置での作業が可能なので作業性にも優れます。

そして最大の特長は、当社独自の特殊リンク機能(特許出願済み)の搭載。材料をセットして手を戻すだけで素早くガードが閉まり、閉まりきると同時にプレスが自動起動するメカニズムを実現しました。従来のような押しボタン操作が不要となるため大幅な生産性の向上が実現します。また、オペレータの負担軽減にもなりますので、疲労が原因のミスも未然に防ぐことにもつながります。

「ニーズを叶えるシステム」をゼロから提案・構築する

私たちのシステム開発は、お客さまの「こうしたい」というご要望が起点になります。プレス装置のメンテナンスを通じておつきあいいただいているお客さまから、しのはらならばソリューションを創出してくれるだろうとお話をいただくケースが多いですね。既存システムがないゼロからのスタートだけに難しく、だからこそのやりがいもあります。

最近の事例では、多関節ロボットとノッチングプレスを組み合わせたシステムが手応えのある案件でしたね。これがロボットメーカーでしたら自社の既存ロボットの機能にいかに工程をはめこむかと考えるのでしょうが、当社は最適な工程のためにどんなロボットがふさわしいかを検討するところからはじめられる。自由度が高いのです。

「安全」こそが制御システム最大のミッション

制御の基本は「安全に動かす」「非常時に確実に止める」のふたつです。どれほど機構が高度化・複雑化しても、この原点は揺るがせにできません。安全対策のスペシャリストを標榜する当社では、基本となる安全化制御回路とソフトウエアを開発。お客さまの生産ラインにマッチしたかたちに機能を調整してお届けしています。このカスタム化も当社が得意とするところです。また、お客さまの海外進出にともない、生産をおこなう国ごとの安全基準に合致した制御システムの提供もおこなっています。

サーボ化・遠隔監視・操作盤共有化……多様なニーズに応える

フレキシブルな製造を実現するサーボ化においても、制御技術は大きな力を発揮しています。その一方、近年ますますニーズが増えている遠隔監視については、プログラマブル・コントローラに機能を組みこんで対応。お客さまの現場で異常が生じた場合は、即座に当社のサービス担当が対応する態勢を確立しています。また、製造ラインに混在しているメーカーがまちまちの制御盤を共有化したいというニーズにも、お応えしています。

ところでタッチパネル操作盤は日進月歩をしており、短いサイクルでより操作性の良い製品が登場します。当社では、タッチパネル制御盤については市場品を吟味したうえで、お客さまにご提案しています。なぜ市場品を用いるか? それは、(1)その時点での最新の製品を導入できる、(2)イニシャルコストを下げることができるメリットに加えて、(3)システムがブラックボックスにならないのでのちのメンテナンスや改良が容易――という理由があります。

宇宙創成の謎を解きあかす加速器に、しのはらの技術が貢献

目下、しのはらの成形技術開発部がプライドをかけて注力しているのが、ニオブのプレス加工化です。ニオブはレアメタルの一種。現在、アジア・欧州・米国の3極の素粒子物理学者による国際共同研究チームによって「ILC(国際リニアコライダー=International Linear Collider)計画」が推進されていますが、そこで用いられる全長約30kmの直線状の加速器の重要部品が、ニオブ素材なのです。従来、この部品はこれまで切削加工で作られていたのですが、これをプレス加工すればコストを八分の一に低減できます。しかし、ニオブのプレス加工など前例がありません。だからこそ私たちは挑戦するのです。他社がやらないこと(できないこと)をやりとげる。私個人としても技術者冥利につきると思っています。

当社ではニオブの物性研究を進める一方で、プレス加工の試行錯誤を繰りかえし、2年がかりで部品製造にまでこぎつけました。これから実機に組みこんでのテストがおこなわれます。ここで強調しておかなければならないのは、このニオブのプレス加工は成形技術開発部だけでは成しえなかったということです。精密な加工を実現できたのは、システム開発部が得意とするサーボ化技術があればこそですし、電気制御や機械技術の部門の協力がなければクリアできなかったハードルもありました。

熟練の職人技を自動化する

私がこれまで手がけた案件のうちとくに記憶に残っているのは「粉末成形プレス加工のサーボ化」です。装置そのものは既存のものなのですが、成型のオペレーションはベテランの職人さんが経験と勘にまかせるしかなく、装置のメンテナンスにも神経を使いました。その職人技を、誰でもパラメータを入力するだけで可能にしたのです。

また、しのはらに寄せられる依頼には、研究開発用の専用機の開発もあります。既存のプレス機では達成できない精度や機能を求められるので、一回一回がチャレンジです。こうした案件で相談をいただけるのも、当社が装置メーカーではなく、成形技術について熟知した専門企業だからでしょうね。

しのはらプレスサービス株式会社 本社/工場 〒273-0016 千葉県船橋市潮見町34-2 TEL.047-433-7761(代) FAX.047-433-7706

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